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| 痒みは、「掻きたくなるような、あるいは掻かずにおられないような、そして実際に掻破行動を起こす感覚」と言われています。周知のように種々の皮膚科系疾患のみならず内科系疾患の皮膚症状としても発現します。従って、痒みの発症機序は単純な単一機構のみでは説明がつかないように思われます。私の教室では、とくにアレルギー性皮膚疾患における痒みの発症機序についての基礎的な検討を行っています。 |
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| 痒みは古くより、痛みと比較されますが、周知のごとく、痛みは生体のほとんど全ての組織に存在する傷害受容器が興奮して生じます。すなわち、痛みは有害刺激に対する 警告反応としてとらえられています。痒みはこれとは若干、異なった知覚です。痛みに比べ、痒みは全身的でなく粘膜や皮膚表皮の最外層のみで感じる感覚です。また、痒みは掻破行動を誘発しますが、痛みはそのような行動は起こしません。さらに、痒みはモルヒネなどオピオイドによって引き起こされたり、感覚が増強されますが、痛みは当然モルヒネにより抑制されます。 |
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| このように両者には違いが見られますが、共通点もあります。たとえば、痛みと痒みの感覚点の分布は非常によく似 ています。さらに、両者とも内因性の神経や血管作用物質によって発生させることができ、伝導速度の遅い神経線維によって感覚が伝わるようです。 |
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| このようなことから痛みの神経線維と痒みの神経線維は一部、同じものではないかとも言われています。このように、痒みの神経線維の違いや神経伝達の機序を明らかにすることは、痒みの基礎研究では重要な問題でありますが、臨床的には痒みによっておきる擦過行動が最も大きな問題と考えられます。すなわち、擦過行動はアレルギー性皮膚疾患、とくに、アトピー性皮膚炎では症状の増悪因子の最大のものと考えられています。 |
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| そこで、我々はまず、擦過行動のモデルから研究を始めました。これまでに富山医科薬科大学の倉石先生達が compound 48/80(以下48/80)によるかゆみ関連引っ掻き行動をマウスに起こさせ、薬理学的に検討を行われました。先生たちの研究はこの分野での先駆けとなりましたが、48/80が肥満細胞欠損マウスにおいても、同様な反応を惹起することからアレルギー性皮膚反応による痒みのモデルとしては問題があることがわかりました。そこで我々は、アレルギー反応によって誘発される痒み関連引っかき行動についての検討を開始しました。 |
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| まず、このモデルの特徴を明らかにするために、いろいろな薬の作用を検討しました。実験はマウスにアレルギー反応を起こさせる群と前述の 48/80 による引っかき行動を起こさせる群とに分けて行っています。 |
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| ステロイド剤であるプレドニゾロンは、アレルギー反応による炎症および引っ掻き行 動を抑制しましたが、48/80 誘発引っ掻き行動には影響をおよぼしません。このことから、我々のマウスの引っかき行動はアレルギーに起因するものと思われました。さらに、古典的抗ヒスタミンおよび抗セロトニン剤であるシプロヘプタジンは、アレルギー反応による引っ掻き行動、および48/80 誘発引っ掻き行動を明らかに抑制しましたが、アレルギー反応による炎症反応には、影響がみられません。 |
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| さらに、抗ヒスタミン薬のテルフェナジンおよびセチリジンは、アレルギー反応による炎症反応を抑制し、引っ掻き行動も抑制する傾向を示しましたが、48/80 誘発引っ掻き行動には影響を与えません。これらのことから、アレルギーによる引っかき行動は一部はヒスタミンが関与するが、抗ヒスタミン薬のみではなかなか完全に抑えきれないものと思われました。 |
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| 局所麻酔薬のジブカインは、アレルギー反応および 48/80 誘発引っ掻き行動を明らかに抑制しましたが、アレルギー反応による炎症反応には影響がみられませんでした。したがって、これらの引っかき行動は知覚神経を介した反応であり、痒みによるものであろうと考えております。 |
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| 私共、基礎で薬理学を研究しているものにとりまして、知覚神経系の実験は客観的評価の難しい分野です。マウスに「痒い」かと聞いてもマウスは何も答えてはくれません。引っかき行動をするから恐らく痒いのだろうと勝手に人間が考えているだけです。しかし、この引っかき行動でもやはりアレルギーによる場合と 48/80 による場合では薬の効果にも差があります。このことはアレルギー反応による引っ掻き行動の誘発には他の痒みによる引っかき行動を起こすとは異なったメディエータ ーや神経機構等の関与が考えられます。 |
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| このように、動物モデルでも痒みの多様性が示唆されております。アトピー性皮膚炎での掻破行動は疾患の増悪因子であることが明らかな現在、この行動の機序ひいては痒みそのものの機序を早急に明らかにする必要があるものと思われます。このような基礎研究が少しでも難治性のアトピー性皮膚炎の病態解析に役立てば幸いであると考えています。 |
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| 永井 博弌 |
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(ながい・ひろいち) |
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| 1968年 |
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岐阜薬科大学大学院薬学研究科博士前期課程修了 |
| 1972年 |
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薬学博士(九州大学) |
| 1991年 |
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岐阜薬科大学薬理学教授 |
| 2003年 |
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岐阜薬科大学学長 現在に至る |
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| ●専門分野 |
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薬理学、免疫薬理学 |
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| ●研究課題 |
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アレルギー性疾患 (気管支喘息、アトピー性皮膚炎、
アレルギー性鼻炎) の発症機序と治療薬の研究、
自己免疫疾患 (リウマチ性関節炎) の発症機序と治療薬の研究 |
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| ●所属学会 |
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日本薬学会、日本薬理学会、日本アレルギー学会、
日本免疫学会、日本炎症再生学会 |
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| ●学会活動 |
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日本アレルギー学会理事 (1999年~)・会長(2003年~)、
和漢医薬学会理事 (1998年~2003年)、Allergy international 編集委員 (1995年~)、
日本薬理学会評議員 (1975年~)、小児東洋医学会理事(2001年~)、
日本炎症再生学会理事 (2003年~) |
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| ●社会活動 |
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環境保護サーベイランス局地的大気汚染健康影響検討委員 (1996年~1998年)
日本学術会議会員(2002年~) |
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