尋常性乾癬に対する外用連続療法について
    香川医科大学皮膚科教授/窪田 泰夫

尋常性乾癬は遺伝的素因を背景に、種々の免疫学的、生化学的異常を呈する慢性の炎症性皮膚疾患で、感染やストレスなどの環境因子により増悪することが知られている。現時点では本疾患は完治、ないし長期にわたる寛解を維持することが困難な皮膚病のひとつといえよう。
しかし近年、本疾患治療の選択肢は内服、外用療法を含め飛躍的に増加した。乾癬治療のポイントはさまざまな治療法の長所や短所を考慮して、最大限の速やかな効果発現と最小限に副作用を抑えて(すなわち有用性/リスク比の改善)、長期にわたる寛解維持を目指すことである。
乾癬治療の主流は副腎皮質ステロイド外用剤であり、その優れた抗炎症効果は、臨床上極めて有用と評価されてきた。しかし、乾癬は慢性に経過するため、ステロイド外用剤の長期使用による皮膚局所の副作用の出現や、急なステロイド外用剤中止により皮疹が悪化するリバウンド現象など、ステロイド外用剤使用にあたっては細心の注意が必要であることは言うまでもない。
乾癬治療の新たな選択肢のひとつである活性型ビタミンD3 誘導体外用薬は、表皮細胞のビタミンD3 レセプターに結合し、1α,25-dihydroxyvitamin D3 と同程度の細胞増殖抑制作用、分化促進作用、さらに血管新生抑制作用などを有する。しかし生体内カルシウム代謝への影響は少なく安全性に優れている。
我々は活性型ビタミンD3 誘導体外用薬および最強力のステロイド外用剤を併用した外用連続療法(topical sequential therapy )の有効性および安全性について検討を行っている。とくにこの2種類の外用剤をいかに使い分けし、両外用薬の特色を活かしつつスムーズにステロイド外用剤から活性型ビタミンD3 誘導体外用薬へ切り替えていく効果的な外用方法につき注目した。
まず両外用剤を一日2回同時に併用させたが、これは互いの薬剤に相乗効果を発揮させ、速やかな乾癬皮膚病変の改善が可能であり、活性型ビタミンD3 誘導体外用薬使用時にみられる皮疹部や周辺皮膚への刺激感の軽減も兼ねるものと思われた。多くの例では、この外用方法を2ないし4週間続けることにより局面状皮疹の浸潤は急速に消失し、平坦化した。
次のステップでは、ステロイド外用剤の急激な中断による乾癬の再燃を避けるため、週末のみ(一週間のうち土・日)ステロイド外用剤と活性型ビタミンD3 誘導体外用薬との同時併用を続けるが、他の日(月から金まで)は活性型ビタミンD3 誘導体外用薬の単独使用とした。さらに皮疹の寛解状態が続いた場合は、ステロイド外用剤の使用を中止した。中等症から軽症の乾癬患者さんでは約4割においてステロイド外用剤からの離脱が可能であった。
今後、さらなる長期観察によってステロイド外用からの離脱可能な期間や乾癬患者さんの QOL 維持についての検討なども必要と思われた。
いくつかの特色ある外用薬剤を上手に用いて、少しの工夫で互いの外用薬剤の効果発現を最大限とし、外用薬剤のもつ副作用の発現を最小限とするこうした外用連続療法は、第一線の乾癬治療の現場において簡便かつ有用な乾癬の外用治療法のひとつになるものと思われた。また、このように柔軟に対処、変更しうる外用治療法は患者さんにとっても、自らが乾癬に積極的に向き合ってゆく効果もあったように思われた。
今回の検討は他の治療法との比較もなく、厳しい評価に耐えうるには多くの問題点も残るが、日常診療の場で実施可能な乾癬外用治療方法のひとつの例として紹介した。
一層の工夫や改善の余地も残されており、今後とも実地診療の場で多くの症例の検討と評価を加え、改良していく予定である。
窪田 泰夫 (くぼた・やすお)
1955年 2月3日高知県生まれ
1979年3月   東京大学医学部医学科卒業
1979年6月   東京大学医学部附属病院皮膚科 文部教官助手
1985年1月   米国国立衛生研究所(NIH)に皮膚学研究のため留学(1988年1月まで)
1986年11月   山梨医科大学医学部皮膚科 文部教官助手
1990年1月   山梨医科大学附属病院 講師・外来医長
1992年1月   聖マリアンナ医科大学医学部皮膚科 助教授
1999年4月   香川医科大学皮膚科 教授
専門分野
1. ヒト皮膚血管内皮細胞、ヒト毛乳頭細胞およびヒト皮膚肥満細胞の培養と細胞生物学
2. マウス神経冠細胞の培養とメラノサイトの発生と文化
3. 皮膚アレルギー性炎症、血管炎、肥満細胞症
主な学会活動
日本皮膚科学会(評議員)
日本研究皮膚科学会(評議員)
日本色素細胞学会(評議員)
日本乾癬学会(評議員)
日本皮膚アレルギー学会(評議員)など
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