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| 最近、本欄に薬物の経皮吸収と口腔粘膜吸収に関する拙文を掲載いただいたばかりであるが、あつかましく再投稿することをお許しいただきたい。今回は口腔粘膜吸収に焦点を絞る。 |
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| 口腔粘膜は、胃腸管・肝の初回通過効果を回避できる薬物吸収部位であり、経口投与でバイオアベイラビリティの低い薬物に対する注射に代わる投与部位として期待できる。口腔は構造および機能面で多種多様な粘膜から構成されているが、小動物とヒトで粘膜構造が異なるため、薬物透過性の部位差については不明の点が多い。 |
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| しかし、非角質化粘膜の透過性が良好であるのに加えて、角質化粘膜についても、皮膚と違ってリン脂質、糖脂質の分解が不完全で、細胞間隙は極性脂質が残っているため、透過性は悪くないことがわかってきた。 |
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| このような口腔粘膜からの薬物吸収機構は受動拡散によるものとされていたが、約20年前、以前述べた薬物溶液を口に含んで一定時間後に残存する薬物量との差を吸収量とする方法(バッカル吸収試験)により、ニコチン酸、ニコチンアミド、チアミン、グルタチオンなど栄養物質が特殊輸送機構で吸収されていることが発表された。 |
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| 我々も10年前、すでに消化管から能動輸送で吸収されることを明らかにしていたセフェム系抗生物質であるセファドロキシルがヒト口腔から特殊輸送機構で吸収されることを発表したことを手始めに、口腔粘膜における特殊輸送機構の解明を手がけることとした。 |
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| まず、グルコースについてバッカル吸収試験を行ったところ、D-グルコースはL-体に比べて吸収が良好で、飽和現象が認められたことから、D-グルコースの吸収に関与する特殊輸送機構の存在が示唆された。次に、以前述べたヒトの口腔内各部位に適用可能な還流セルを用いて吸収の部位差を検討した結果、舌背および舌腹部でD-グルコースがL-体に比べて吸収が良好で、飽和現象が認められた。 |
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| さらに詳細な検討を行うため、ボランティアの頬および舌背から単離した細胞への取り込みを検討した。これらの細胞は、それぞれ臼歯および前歯で粘膜を数回こすることにより簡単に単離できる。 |
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| その結果、両細胞ともに、D-グルコースの取り込みはL-体に比べてはるかに大きく、飽和現象が認められ、還流セルでは認められなかった頬の細胞にもグルコースのトランスポーターの存在が見出された。 |
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| 代謝阻害剤や各トランスポーターの基質による阻害実験の結果、Na+/グルコース共トランスポーターSGLT1および促進拡散トランスポーター GLUT1〜3の関与が示唆され、ウエスタンブロットの結果、両口腔粘膜細胞にSGLT1およびGLUT1〜3が発現していることが確認された。 |
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| しかし、それらトランスポーターは細胞自身の栄養補給を目的として取り込むためのもので、上皮細胞層の透過、すなわち吸収のためには機能していない可能性が考えられた。その点を明らかにするためには上皮細胞層の透過を検討する必要があるが、小動物の口腔粘膜の構造はヒトとは異なり、またヒトの口腔粘膜を摘出するのは不可能である。 |
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| 思案していたところ、名古屋大学医学部口腔外科上田実教授のグループがヒト口腔粘膜の細胞を重層のシート状に培養して、口腔や皮膚への移植に用いていることを知った。早速問い合わせたところ、快く培養法を教えてくださった。 |
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| その後、本学歯学部口腔外科II 松村智弘教授に、手術により摘出した口腔組織の提供をお願いした。この際、適正な医療行為の結果摘除した組織で、廃棄する運命にあるものであっても、それを研究に用いるために歯学、薬学の両学部の倫理委員会で承認した後、患者のインフォームドコンセントを採りつける手続きをとった。 |
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| しばらくして、ヒト口腔粘膜上皮細胞の重層培養に成功し、輸送実験を行うことができた。その結果、重層の細胞は単離した細胞と同様なD-グルコースの取り込み挙動を示すが、トランスポーターは細胞自身の栄養補給のために取り込むばかりでなく、上皮細胞層の透過、すなわち吸収のためにも機能することを明らかにすることができた。 |
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| その後、先にバッカル吸収試験で明らかにしたセフェム系抗生物質の吸収に関与するペプチドトランスポーターが口腔粘膜上皮細胞に発現して、重層細胞層の透過に機能していることも認めており、以前にも述べたように、今後はトランスポーターを利用して薬物の口腔粘膜吸収を改善したいと考えている。 |
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| 木村 聰城郎 |
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(きむら・としきろう) |
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| 1966年 |
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京都大学薬学部卒業
同大学院を終えて、京都大学助手、助教授 |
| 1975~76年 |
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米国カンザス大学博士研究員(タケル・ヒグチ教授) |
| 1983年 |
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岡山大学薬学部教授(医療薬品科学、薬剤学担当)現在に至る |
| 1994年 |
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タケル・アヤ・ヒグチ記念賞受賞 |
| 2000~01年 |
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日本薬剤学会会長 |
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