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| 皮膚は「情動の器官」ともよばれ、怒りによる顔面蒼白や潮紅、羞恥による顔面の発赤、鳥肌が立つ、緊張による発汗など、情動の変化を直接反映する臓器であることは日常よく経験されることである。また、重要な皮膚症状である痒みは、イライラしたときや恥ずかしいときに無意識に頭を掻く行為に象徴されるように心理状態に左右される。 |
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| 皮膚が他の臓器と異なる特徴として、自分自身で触ることができる点があげられる。その結果、病変部を掻いたり触ったりむしったりすることによって、みずからの手で病変をさらに悪化させてしまうのである。もう一つの特徴は、病変が自分だけでなく他者にも比較的容易にみられることが精神的なストレスのもとになることである。これらはともにさらなる病変の増悪を招来する可能性をもっており、皮膚疾患の診療において十分に留意しなければならない。 |
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| アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚では、表皮の最外層をカバーして体内の水分の蒸散を防ぐ角質細胞間脂質の量が健常人と比較して有意に減少しており、いわゆる “乾燥肌”がみられる。角層間の脂質と水分が減少すると角層同士の接着が悪くなって細胞間に隙間が生じ、汗や唾液などの非特異的な刺激による皮膚炎が生じやすくなる。またバリア機能の低下した皮膚では、表皮細胞の活性化による炎症性サイトカインの産生増加や、表皮の抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞の活性化による抗原提示能増強がみられ、抗原特異的な炎症も起こりやすくなる。 |
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| 表皮のバリア機能は医学部学生の最終試験中に有意に低下するが試験後の休暇時には再び回復し、これらの変動は精神的ストレスを表すスコアの推移と強い相関を示していたこと、あるいはインタビューなどの短時間のストレスでも表皮バリア機能が低下し皮膚の乾燥がみられるようになることなど、精神的なストレスと表皮のバリア機能低下の関連を示唆する研究結果がある。 |
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| AD 患者の多くは血清総IgE値および食物抗原や吸入抗原に対する特異 IgE 抗体価が高値を示す。これらの抗原による刺激は、肥満細胞表面の高親和性 IgE 受容体(FceRI)を架橋してヒスタミンなどのメディエータの遊離を誘導するのに加えて、ランゲルハンス細胞上の FceRI を介してT細胞を活性化して遅延型過敏反応を惹起する。 |
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| 動物を用いた急性ストレスモデルでは、抗原特異的IgE増加、肥満細胞の脱顆粒や遅延型過敏反応の増強などがみられ、精神的ストレスとアレルギー炎症の増悪との関連が示唆される。湾岸戦争に伴って Th1 優位の免疫反応がアレルギーを増強する Th2 優位の反応に変化していく現象が服役兵に観察されたことや、AD 患者では対照成人に比べて精神的ストレス負荷後の Th2 サイトカイン産生量が有意に高いことなどから、ストレス負荷に対する免疫反応は AD 患者においては Th2 優位のパターンになっているものと推測される。 |
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| 痒みは、日常生活上の動作や精神集中、ときには睡眠を妨げる皮膚の不快な感覚で、患者の生活の質を低下させる AD の主要な症状である。また皮疹部を掻破することによって皮膚炎が増悪、拡大し、そのためにさらなる痒みが誘発されるという悪循環が、AD の慢性化・難治化を引き起こすメカニズムのひとつと考えられる。AD 患者では、精神的ストレスによって痒みや掻破行動が増強することが知られており、ストレス動物モデルでも自発的な掻破行動が観察される。 |
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| AD の症状形成、特に掻破行動に心理的な問題が関与していることが疑われ、スキンケアやステロイド外用剤などを用いた通常の薬物療法だけで AD の症状をコントロールできない場合には、患者の心理面にも配慮した心身医学的治療を行うことが必要である。 |
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| 加藤 則人 |
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(かとう・のりと) |
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| 1989年3月 |
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京都府立医科大学医学部卒業 |
| 1992年4月 |
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京都府立医科大学皮膚科学教室助手 |
| 1997年4月~翌6月 |
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ドイツ・ミュンヘン大学、ボン大学医学部皮膚科免疫生物学研究部門研究員 |
| 2000年4月 |
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京都府立医科大学皮膚科学教室講師 |
| 2002年11月 |
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京都府立医科大学皮膚科学教室助教授 |
| 2003年4月 |
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京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚病態制御学助教授
現在に至る |
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