紫外線感受性遺伝子は存在するか
    富山大学大学院医学薬学研究部皮膚科学 教授/清水 忠道

果して紫外線感受性遺伝子は存在するのだろうか?これは日常診療をしている中で、皮膚癌の患者さんを診るたびに考えていることです。
私は1991年から2年間米国マイアミ大学・ストレーライン教授の教室に所属し、健常人Caucasianについて紫外線感受性フェノタイプの検討を行いました。
ストレーライン教授(1935-2004)は1970年代に皮膚が重要な免疫を司る臓器(skin associated lymphoid tissues;SALT)であると世界で初めて提唱した先生であります。そして、光免疫学なる研究に尽力を注ぐと共に、紫外線の皮膚免疫に及ぼす影響に関して多くの成果を挙げられました。そして私に臨床研究の重要性を教えてくださったのも、彼でした。帰国後、同時期に同研究室に留学した仲間と共に、自分達が紫外線を照射した被験者の試料を基にヒトの紫外線感受性遺伝子の同定を試みました。その結果、私達はCaucasianを対象とした解析から、紫外線感受性フェノタイプとTNF遺伝子との関連を一部見つけることができました。
しかしながら、この10年で幾つかの研究グループがヒトについて紫外線感受性の研究を行ってきましたが、残念ながらこれといった候補遺伝子はまだ見つかっておりません。ましてや日本人を対象として未だ紫外線感受性フェノタイプの検討はなされておらず、今後日本人であるという遺伝的背景のある集団について紫外線感受性候補遺伝子を検索することは重要であると考えております。
光線療法ではナローバンドUVBなどを用いた紫外線治療は普及しており、新たな局面を迎えている皮膚科領域の治療に紫外線照射療法は非常に有用であります。現在では紫外線療法は尋常性乾癬、白斑、菌状息肉症、脱毛症などの適応疾患に加え、痒疹群やアトピー性皮膚炎など、多くの皮膚疾患の治療に行われております。患者数の多いこれら皮膚炎群疾患に対してこの治療の有用性が認められているだけに、長期間におよぶ紫外線治療による皮膚障害は、我々皮膚科医がこれから危惧しなくてはならない重要な問題です。紫外線照射に対する感受性の高い患者に対して不用意かつ長期間にわたりこの治療を続けることは、発癌への誘因になり危険であります。そのためにも、紫外線感受性の高い人、低い人について治療に使う量、期間に一定の指針を定めることが必要となります。
高齢者社会における光発癌の発生率は今後さらに増大することが予想されます。従って公衆衛生的に光発癌のリスクを把握することは、保健医療計画の立案上必要なデータであると考えられます。勿論紫外線対策及びスキンケアといった予防教育は重要でありますが、光発癌のリスクについて人々に根拠に基づいた啓蒙を行うためにも、紫外線感受性遺伝子をみつけることは意義深いことであります。
清水 忠道 (しみず・ただみち)
1986年 3月 北海道大学医学部医学科医学専門課程 卒業
1986年 4月   北海道大学医学部附属病院皮膚科
1991年 8月   米国マイアミ大学皮膚科学教室、免疫・微生物学教室 研究員
1996年11月   北海道大学医学部附属病院皮膚科 講師
2005年10月   富山大学医学部皮膚科 教授
2006年 4月   (名称変更)富山大学大学院医学薬学研究部皮膚科学 教授
現在に至る
専門
皮膚炎症、皮膚アレルギー
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