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| シアトルで皮膚科の臨床留学しているとき、Dr. Raugiという研究を全くしない風変わりな教授がいた。彼の自慢はネクタイで、どうやら2000本以上持っているらしいが僕からみると非常にセンスが悪く、日本で言うならドンキホーテかどっかに一本100円くらいで売っているアニメの動物が描かれているようなものばかりで、お世辞にもいいネクタイですね、と言ってあげることがどうしてもできなかった。 |
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| まあ、そんな話はさておき、彼は臨床一本で教授になられただけあって、並外れた臨床力を持っていた。圧巻はレジデントを対象に毎週行われるDr. Raugi Roundというもので、内科の病棟にふらっと入り、我々は患者さんの皮膚をじろじろ眺めてなぜこの患者が入院に至ったかを推理するのだ。最後に Raugi先生が患者さんの皮膚のつや、色合いや、爪や毛にいたるまで細かい所見を見逃さずに事細かに患者さんの皮膚所見を説明され、最後に「この患者は糖尿病、高血圧、高脂血症が背景にあって、最近心筋梗塞を起こし、バイパス目的で入院したが術後感染症を起こし敗血症になり、現在は敗血症から回復して1週間くらい経った状態であろう」などと説明してくれる。その後で、この患者のカルテのチェックをするわけだが、恐ろしい位当たっているのである。最初は信じられず、この人はあらかじめ内科病棟の患者をあらかじめ調べているのではないか、と疑ったことすらあった。究極の臨床力とはこのことだと感じ、ずっと彼の後を金魚の糞のようにつきまとい臨床を学んだ。知識だけでなく、臨床のセンス、というか、普段からすれ違う人などをよく眺めては、あの人はもうあまり長くないだろう、とかわがままな正確に違いない、だのいろいろと話が尽きることはなかった。楽しい臨床修行だった。 |
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| さて、筆者は今、大学で医学の発展に少しでも貢献したいと研究にできるだけ時間を割くようにしているが、最近は論文のreviewや学生の指導など日々忙しくなる一方でゆっくり論文を読んで瞑想や妄想に耽り、新たな仮説を立てて実験するような時間が激減した。しかしながら自分の指導している大学院生達には興味深いアイデアを提供する義務がある。ただ、面白いアイデアはゆとりから生まれることが多く、ばたばたした臨床の合間などにはなかなか浮かばないものだ。よく「若い時はいいが、年を取ると頭が硬くなってアイデアが出てこない」という話を聞くが、必ずしもそうではなく、年齢と共に様々な責任や雑用に忙殺されてゆとりがなくなるからではないか、という気がしている。それ故、僕には出張中の電車や、自動車通勤、あるいは1−2ヶ月に一回の温泉旅行で湯船につかっている時がチャンスであり、実際今行っている実験の多くは新幹線や温泉の湯船で生まれたものである。 |
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| 実は温泉にはもう一つの楽しみがある、風呂場にはむき出しになった皮膚がごろごろ転がっている。僕は必ず眼鏡をつけて入浴し、周りの皮膚達を眺める。Raugi先生にはなれないが、その人その人の人生が皮膚には刻まれており、悪趣味かもしれないが、彼らのこれまでの生き様を想像するのは、なかなか楽しいものだ。 |
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| というわけで、僕には温泉のための休暇が必要な、立派な大義名分がある。 |
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| 椛島 健治 |
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(かばしま・けんじ) |
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| 1996年 3月 |
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京都大学医学部 卒業 |
| 1996年 4月 |
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須賀米海軍病院 インターン |
| 1997年 7月 |
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ワシントン大学医学部付属病院(レジデント、内科・皮膚科) |
| 2003年 3月 |
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京都大学大学院医学研究科 博士課程 卒業 |
| 2003年 4月 |
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京都大学大学院医学研究科 皮膚科学 助手 |
| 2003年10月 |
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カリフォルニア大学サンフランシスコ校 医学部 免疫学教室 |
| 2005年10月 |
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産業医科大学 皮膚科 助教授 |
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| ●主な学会活動など |
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日本皮膚科学会
日本研究皮膚科学会(若手理事)
日本免疫学会
Journal of Investigative Dermatology (associate editor)
Journal of Dermatological Science (associate editor)
Journal of Dermatology (section editor)
日本皮膚科学会賞(皆見賞)
日本免疫学会研究奨励賞 |
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