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| 私の祖母は強皮症であったらしい。「らしい」というのは、祖母の晩年のいろいろな症状(レイノー症状とか指が太くなったりとか潰瘍とか)を後から振り返って考えると、どうも強皮症に間違いないように思われるのだが、生前にきちんと診断されていたわけでないので、今となってはわからないためである。祖母は私が大学生の間に亡くなったのだが、私は孫の中で一番年下だったためか祖母にはずいぶん可愛がられたので、もしあと何年か長生きして私が医者になって診てあげたとしたらさぞかし喜んだであろうと思うことがある。 |
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| 皮膚科に入局して、どういうめぐりあわせか強皮症を専門に選ぶことになった。強皮症は中高年の女性に発症することが多く、また発症から時間の経った患者さんも多いので、入局した頃の若かりし日の私にはなんだか祖母を診療しているような感覚をもった。最初の頃は、傷の処置の仕方やガーゼや包帯の巻き方まで患者さんに様々なことを教えてもらったが、患者さんからすると、それこそ息子か孫のような感じであったのではないか。3年前に東京から金沢に転任になり単身赴任しているが、東京のときにみていた患者さんから「寒くて風邪ひいてない?」とか「ちゃんと栄養のある食事をとってる?」といった内容の電話や手紙をいただくことがある。私が励まさなくてはいけないはずの患者さんから逆に励まされているのは心許ない限りではあるが、昔から知っている患者さんからみるとそんなものなのかもしれない。 |
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| 強皮症の患者さんから、「わたしの病気は遺伝しますか?」と聞かれることがよくある。もちろん強皮症はいわゆる遺伝病ではないわけだが、家族内発症危険率は決して低くはないと考えられている。しかしながら外来で、疾患感受性遺伝子、多因子遺伝、遺伝的素因と後天的環境因子などについての現在の医学的な考え方を説明しても、患者さんにとっては多分あまりありがたくない。それよりも「私の子供や孫はどうなんですか?」という顔をしている。そんなとき、私の「強皮症のおばあちゃん」の出番となる。「うちのおばあさんも実は強皮症だったけれど、家族にほかには強皮症の人はいないし、私自身もなっていないよ」とお話しすると、みんな納得して晴れやかな顔になる。それに加えて、少し親しみももってもらえるようでもある。祖母の病気を診てあげることができなかったばかりか、今でも祖母に手伝ってもらっているようなものであるが、おかげで外来は和やかになる。 |
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| 最近ふと気が付くと、自分と同年代や自分より若い患者さんがずいぶん増えてきた。いつまでも頼りないのも困りものだが、知らない間に態度が大きくなっていないかとか話しづらくなっていないかなどが心配になる。今のところ強皮症に対する根治的な治療法がない以上、せめて少しでも家族のような存在に思ってもらえればと思って診療をしているが、なかなか難しい。また、祖母の病気には間に合わなかったけれどこんな治療法ができたよと報告できることがあれば、それでもきっと祖母は喜んでくれるだろうと思っている。 |
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| 藤本 学 |
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(ふじもと・まなぶ) |
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| 1992年 |
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東京大学医学部医学科卒業・皮膚科入局 |
| 1997年~ |
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Duke大学メディカルセンター免疫学教室に留学 |
| 2000年 |
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国立国際医療センター研究所 細胞修飾生体反応研究室 室長(病院皮膚科) |
| 2003年 |
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東京大学医学部附属病院皮膚科 助手 |
| 2004年 |
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東京大学医学部附属病院皮膚科 特任講師(病院) |
| 2005年 |
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金沢大学大学院医学系研究科皮膚科 助教授 |
| 2007年 |
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同 准教授(名称変更) |
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