IL-17を追いかけて
    高知大学医学部皮膚科学講座講師/中島 喜美子

入局した15年前、電顕をやらないかと先天性表皮水疱症の患者さんの小さな標本を渡された。さらに細切した組織を固定、脱水、置換、包埋。次に、ガラスナイフで切り、ダイヤモンドナイフで切り、後染色するという過程はとてつもなく難しく長く感じられた。ガラスナイフも自分で作った。しかし、やっと切片ののった標本を初めて電顕で見たときそのミクロの世界の美しさに驚いた。細胞があって小器官がきれいに観察できた。ここでいったい何が起こっているのだろうかと思った。当時の私はミクロトームの前にいても始終ポケベルで病棟から呼ばれたが、この仕事は途中で中断することができたので空いた時間に細々と作業を続けた。標本作りに時間がかかり電顕の前に行くのはやっとだったが、やっと見ることができた世界はきれいだった。探す所見はなかなか見つからず、得られた所見が何を意味するのかはいまだにわからないことの方が多いが、その世界をみる楽しさは今も変わらない。
2年前, 佐野栄紀教授が赴任された。沢山のマウスと一緒に。私もマウスを使った実験をしてみたいと思った。最初に渡されたマウスは、セラミドなどのスフィンゴ脂質合成酵素の遺伝子を表皮特異的にノックアウトしたマウスだった。どんなサイトカインが発現しているかをみるように、というのが最初に与えられた仕事だった。RT-PCRも初めてのこと。アトピー性皮膚炎のモデルであれば皮膚でIL-4が発現しているかと思ったが、目指すIL-4は全く出なかった。ゲルの空いたウェルがもったいなくて手持ちのプライマーをいろいろ試してみると、心細いバントではあったがIL-17が出た。この時、初心者がやっても「あるものは出る」と思った。次にマウスのリンパ節からリンパ球を取り出し細胞内サイトカインをFACSで観察するように言われた。何をしているかもよくわからずに間違わないようにマニュアル通りに作業を進めた。電顕の時と同じように最初は難しいと感じた。しかし、初めてのFACSの解析でIL-17陽性細胞を観察することができた。抗体がよかったのだろう。解析中に画面の上方にどんどん上がる細胞群を花火のようだなあ、とみとれた。
今は、乾癬モデルマウス(K5.Stat3C.transgenic mice)におけるIL-17の役割についても調べている。乾癬の発症メカニズムについていろいろな事実が明らかになってきているが、それぞれの事実の関連についてはブラックボックスが多いと思う。乾癬病変の成立の中でIL-17というサイトカインはどのポジションにいるのだろう。最初に電顕でみたミクロの世界のようなきれいなscienceの世界を覗いてみたいと思いながら、今日も実験をしている。
中島 喜美子  
1990年 滋賀医大卒業
1990年   香川医大第2内科研修医
1994年   高知大学皮膚科医員
2006年   高知大学皮膚科助教
2007年   高知大学皮膚科講師
INDEX
TOPWhat's 帝國製薬製品情報会社情報採用情報医療関係者のみなさまニュースリリースサイトマップ
Copyright (C) 2008 Teikoku Seiyaku co.,ltd. All Rights Reserved.