皮膚外科の落とし穴と工夫
    山形大学医学部臨床教授/角田 孝彦

皮膚科医を30年もやっていると、ときに落とし穴にはまることもある。また本に書いてない工夫も自然に生まれてくる。
1.舌小帯部の粘液嚢腫
2人とも10代の男性だったと思うが、本症は手ごわい。液体窒素をして再発、切除しても再発した。歯科口腔外科に相談すると、ここはむずかしいとのこと。歯科口腔外科で切除後、辺縁部を反転させて周囲に縫いつける方法をしてみたが、それでも再発した。
2.老人陰嚢部の手術
10年ぐらい前に2例続けて老人の陰嚢部の皮膚腫瘍を切除後に陰嚢の3倍ぐらいある 大きな皮下血腫をつくったことがある。老人の陰嚢をよくみると皮膚の浅いところに拡張した毛細血管が走っている。おそらくこれが切れると大きな血腫ができるのだろう。エピレナミン入りのキシロカインを使うと血管が 収縮して術中はあまり出血しないのかもしれない。手術前に表層を走る毛細血管をチェックし、手術時は丁寧に止血したい。
3.下肢の植皮部のリンパ漏
昔、中年女性の下腿の皮膚悪性腫瘍切除+全層植皮部の下方辺縁に1ヵ所リンパ漏ができた。血管外科の先生と相談して、リンパ漏部をナイロン糸でZ縫合して止め、2週間後に抜糸するともうリンパは出てこなかった。
4.皮下の動脈瘤
額の小豆大、大腿の鶏卵大の皮下腫瘤、ともに紹介例であったが、つまんでみると拍動をふれる。皮下の動脈瘤であった。皮下腫瘤 では必ず拍動のチェックをしたい。
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5.皮下腫瘤の画像診断
背中の脂肪腫と思ったら脂肪肉腫だった。殿部の大きな脂肪腫と紹介されてきたが粉瘤だった。皮下腫瘤はCT、MRI、エコーなどでチェックしてから手術に入りたい。筋膜下脂肪腫はCTでほとんど確認できる。
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6.陥入爪手術時のセンターライン
前医で陥入爪の手術をしたが再発した。爪が指に対して曲がっている場合、指の中央線と平行に爪と爪母を切ると爪や爪母の一部が残ることがある。これを防ぐには爪にセンターラインを書きそれと平行に切除をすればよい。
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7.首切り切除
有茎性の脂漏性角化症などで小さく切ろうと思っても基部が見えにくい場合がある。この場合はまず茎部を切ってしまうと簡単に基部の切除ができる。欠点は腫瘤が2つに分かれてしまうこと、万が一、悪性の場合は腫瘍細胞を播種する可能性があることである。
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8.マダニ刺症の処置
山形では春から夏にマダニにさされてくる人が多い。私も今年山登りのあと右下腿にさされた。とくに子供の場合は短時間で処置したい。局麻して、まずピンセットで虫体をひっぱってとる。そのあとに残った口部を3mmパンチで皮下脂肪織まで確実にとり、1針縫合する。この方法だと虫は2つに分かれてしまうがきわめて短時間ですむ。3mmパンチを口部の傾きに合わせて進ませるのがコツ。
角田 孝彦 (つのだ・たかひこ)
1978年 弘前大学卒業
1982年   弘前大学大学院修了
    弘前大学病院皮膚科助手
    山形県立中央病院皮膚科医師
1986年   山形市立病院済生館皮膚科医長
2009年   山形大学医学部臨床教授
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