もやい症例がすきや
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学 准教授/青山 裕美

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病理カンファレンスで結論がつきそうにない症例は好きですか?帰りが遅くなるから嫌い?
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早く終わらせたい時、ある疾患に対して標準的にあるべき所見が、あるとかないとか列挙して、それがあるから○○病、ないから違う、と結論すると良いと思います。しかし、さらに経験を積むと、内心、簡単には切り捨てられなくなるのです。極端なことを言えば棘融解のない天疱瘡。頭がおかしくなったんじゃないかとおもわれても困るので大きな声ではいわないけれど、最近、そういう症例こそが面白いとおもって興味をもって臨床をみるようになりました。
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患者さんの体には、何カ所も皮疹があって、私達が病理標本として見ているのは、皮疹のほんの一部です。病気には連続した時の流れがあり、診察時に見えているのはほんの一瞬だから、一回の生検の標本に乗っている所見と、たかだか1−2回の受診時の臨床所見で、所見がないのでと、可能性を否定してはいけないと思っています。しかしながら、本質的な所見がそろったものにのみ診断名をつけていかないと疾患概念が変化してしまうので、公の場では狭く診断しています。
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それにしても、非典型例は、もやもやするけど面白いとおもいませんか。(岡大では「もやい症例」と呼びます。)もしかしたら、この切片の皮膚は明日棘融解を形成するところだったのかもしれないな、と時間軸に気を配るようにしたら、診察がすごく面白くなりました。不完全な変化を初期の変化かもしれないと疑ったり、2週間後の皮膚をみて初診時の仮説を修正したり、異なる臨床所見を呈する部位を何カ所も生検させてもらいどんな順番に皮疹が形成されるのかを手がかりに病態を考えます。そんなシンプルな観察を経て徐々にその疾患の本質というか、においのようなものがわかるようになります。もやい症例に新しい病名がつくこともあるし、提唱されている疾患群に安心して含めるときもあります。
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悩んでもわからない症例が、教授に30秒で「え?○○症候群でしょ。あそこに載っているよ。」と秒殺されるたびに、いつかあんな風に極めたいなーと思います。そのために心がけていることを二つ紹介します。
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1つ目はごまかさないこと。迷う時こそ自分の意見を人前で言うようにします。結果的に間違ったら恥をかくので忘れない良い薬になるから特にお勧めします。2つめは最後まで手を抜かないことです。もやい水疱症が来たら、幅広く鑑別疾患を除外するために検査する、しつこく問診をする、生検した場所が悪かったかもと謝ってでも再生検させてもらうか、血清をIgGに濃縮してまでも間接法をやってみようとおもうか、わからない症例を忘れないで記録しておくこととか。全例にしていたら時間がなくなってしまうので、限られた対象にしてください(笑)。
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そうやって、愚直に取り組んでいると、典型的な症例が来たときに自信をもって診断できますし、もやい症例がきても全体を見渡して「ここが足りないけど、たぶんそうや。」と確信がもてるようになります。皮膚科医としてちょっと向上したと感じると気分が明るく前向きになりますね。
青山 裕美 (あおやま・ゆみ)
1989年 スペース 岐阜大学医学部卒業
    岐阜大学医学部皮膚科入局研修医・医員
1994年   京都薬科大学生命薬学研究所 分子生体制御部門 研究生
1996年   岐阜大学皮膚科助手
2000年   米国 Cutaneou Biology Research Center, Massachusetts General Hospital, Harvard medical school,Paolo Dotto lab 留学
2001年   米国 Diabetes Research Lab, Department of Molecular Biology, Massachusetts General Hospital Harvard medical school, Joseph Avruch Lab 留学
2004年   岐阜大学医学部附属病院講師
2009年   岡山労災病院皮膚科 医長
2010年   岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学 講師を経て現職
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