漢方の臨床研究は海外のジャーナルに
受け入れられるか?
    山梨大学大学院医学工学総合研究部(精神神経医学)/山田 和男

私は、大学を卒業後、研究室の先輩方の指導を受け、研究(当時は、生化学や免疫学などの実験をしていました)の成果を投稿し、受理(アクセプト)され、さらに研究を続け、さらなる成果を投稿し・・・・ということを繰り返してきました。その際の投稿先は海外の英文誌というのが、研究室の暗黙の了解でした。おそらく、本欄をお読みの多くの先生方も、通って来た道だと思います。
ところで、私は、平成7年、母校の大学病院の漢方クリニックに採用されました。最初はなぜか、「生薬の基礎研究はともかく、漢方薬の臨床研究は、海外のジャーナルではとってくれない」というまわりの先生方の言を盲信していたので、漢方薬に関する臨床研究の成果だけは、日本語で書いて日本の雑誌に投稿するものだと思っておりました。しかし、天の邪鬼な私はしだいに、「そんなはずはない、海外誌でも興味深い報告は受理してくれるはずだ」という信念(?)のもと、「漢方の臨床研究の成果を海外に発信しよう」という誇大妄想をもつに至りました。
最初に取り組んだのは、芍薬甘草湯でした。動物を用いた基礎研究やいくつかの症例報告から、芍薬甘草湯が高プロラクチン血症に効果的であるらしいということはわかっていました。ところで、当時は現在のような新規抗精神病薬の発売前でしたので、多くの統合失調症の患者は、無月経などの薬剤性高プロラクチン血症関連症状に悩まされていました。しかも、治療法といえば、薬剤の減量や変更といった消極的なものが中心でした(統合失調症患者では、症状増悪の可能性が高いため、ブロモクリプチンは使いづらい)。そこで、私は、薬剤性高プロラクチン血症の統合失調症患者に芍薬甘草湯を追加投与し、効果を確認しました。結果をダメもとで、Journal of Psychopharmacology 誌に投稿したところ、すんなり受理されました。
これで気をよくした私は、その後も、抗うつ薬のひとつである SSRI の消化器系の有害作用に対する五苓散の有効性の報告(Clinical Neuropharmacology 誌)や、漢方治療が身体表現性障害患者の Quality of Life を改善するといった報告を、海外誌に発表しました。
これらの経験から私は、漢方の臨床研究であっても、海外のジャーナルに受け入れられると確信するに至りました。海外でも確立された治療法がない疾患や副作用に漢方薬を使ったという報告が、受理されやすいようです。
最後になりましたが、私は、漢方薬がメジャーになるための早道は、海外への発信とエビデンスの蓄積であると思っております。上述の経験によれば、海外のジャーナルは、別段、漢方の臨床研究に閉鎖的というわけではないようです。
とくに、大学の先生方、漢方発展のために、漢方の臨床研究の成果を海外に発信しませんか? 漢方薬を製造している、製薬企業のバック・アップも是非お願いしたいですね!
山田 和男 (やまだ・かずお)
1991年 慶應義塾大学医学部卒業
    慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
1992年   慈雲堂内科病院精神科
1995年   慶應義塾大学病院漢方クリニック
2002年   慶應義塾大学医学部東洋医学講座専任講師
2003年   山梨大学医学部附属病院精神科神経科講師
専門分野
臨床精神薬理学、漢方医学
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