漢方の勉強は実践があって初めて身に付く
    新宿海上ビル診療所/室賀 一宏

現在の日本では、広く漢方薬が使用されるようになりました。漢方薬を使ったことのある医師は年々増加し、学会の会員数も医師は7100名を越えました。今から40年程前に漢方を勉強し始めたある先生は、大学の同級生から「気でも狂ったか」と言われたそうです。(30年後には「先見の明があった」と前言を撤回されたそうですが)ですから、大塚敬節先生や矢数道明先生の頃にはどのようだったのでしょうか。今となっては伺う術もありませんが。
現在私の周りには、漢方を専門にしている同年代の医師が何人もおり、先人達とは隔世の感があります。以前勤務していた病院でも、漢方に興味を持っている先生方が何人もおられました。勉強会にも参加し、実際の診療を見学してきました。本も(沢山とは言えませんが)読んでみました。そして各処方に対して、症状と所見を組み合わせてのイメージを作ってきました。
昨今肥満に有効と言われている防風通聖散は、最近個人的には使用頻度が増している処方の一つです。明治時代の漢方医、森道博の診療所(一貫堂)で使用していた代表的処方の一つで、臓毒症体質の改善薬として有名です。
印象として、大柄で赤ら顔、汗をかきかきやって来て、重役腹をしている。そして便秘傾向のある、肥満卒中体質者に用いることが目標となっています。肥満の特効薬として有名になったため希望者が多いのですが、勿論薬だけで痩せられる訳はなく、食事療法や運動療法の併用も大切だと思います。しかし、中には食事や運動が不十分でも、薬の効果か太りにくくなる方がいるのも事実です。
最近効いていると実感している症例に、蕁麻疹の方がおられます。当初いろいろな処方を試しましたが、今ひとつであったので防風通聖散を用いました。下痢が心配でしたが幸い問題なく、抗アレルギー剤無しで我慢できる程度で推移しています。また便秘でみえていた女性では、駆お血剤と併用して益々元気になられました。
これらの方は、どちらかと言えば実証かなと言う程度の体格で、自信を持って処方したわけではありませんでしたが、幸いに下痢もせず継続的に使用できるので、使ってみないと薬の効き具合というのは分からないものだと実感しています。
昨今の日本では、虚弱体質者が増えてしまい、今ひとつ実証向けの瀉下作用や発汗作用のある強めの薬を使う機会が少ないと思っていましたが、体質改善を目的とした場合には一日当たりの服用量に注意すれば長く使えます。
『漢方の勉強は、実践があって初めて身に付く』と体感している毎日です。「虚実さえ間違えなければ大丈夫」と漢方外来を始めた頃、山田後胤先生からお言葉を頂戴したことがあります。私自身が虚証のためか、ついつい虚証向けの処方が多くなる傾向がありますが、時には思い切って実証向きの薬を使用するトレーニングが私には必要そうです。
室賀 一宏 (むろが・かずひろ)
1988年 獨協医科大学卒業
東京医科歯科大学第2内科入局 腎臓内科を専攻
土浦協同病院、青梅市立総合病院、都立府中病院勤務
現在   新宿海上ビル診療所、財)日本漢方医学研究所付属渋谷診療所勤務
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