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| 近年、医療の分野において、患者の視点に立った QOL(Quality of Life:生活の質)が重視されるようになってきた。その背景として、急速に進む高齢化と医学の進歩による急性疾患の減少によって、慢性疾患が大きな比重を占めるようになり、治癒や延命よりも患者の QOL の向上が治療の目標とされるようになったことなどがあげられる。 |
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| QOL を測定する尺度には、特定の疾患に対象を限定して使用できる「疾患特異的 QOL 尺度」と、疾患に非特異的で幅広く使用できる「健康関連 QOL 尺度」がある。SF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)は、米国で作成された健康関連 QOL を測定するための尺度であり、概念構築の段階から心理計量学的な検定に至るまで十分な検討を経て、現在、50カ国語以上に翻訳されて国際的に広く使用されている。 |
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| 我々は、漢方治療が健康関連 QOL に及ぼす効果を評価するために「SF-36 v2 日本語版」を使用することにした。SF-36は、以下の8つの健康概念(下位尺度)を測定するための複数の質問項目(36問)から成り立っている。(1)身体機能、(2)日常役割機能(身体)、(3)体の痛み、(4)全体的健康感、(5)活力、(6)社会生活機能、(7)日常役割機能(精神)、(8)心の健康の8つである。 |
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| 千葉大学柏の葉診療所を初診した患者のうち、6カ月間の漢方治療前後に SF-36を実施しえた302例(男性86例、女性216例、平均年齢57.4歳)を対象とした最近の研究では、6カ月間の漢方治療によって健康関連 QOL が全般的に改善することが示された。対象を有効以上群(231例)と無効群(71例)に分けて検討したところ、有効以上群では身体機能以外の7つの下位尺度でスコアが有意に改善し、中でも日常役割機能(身体)、全体的健康感、活力、日常役割機能(精神)の4つの下位尺度は無効群と比較しても有意な改善を示した。 |
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| SF-36は、健康関連 QOL という万人に共通した概念のもとに構成されており、様々な疾患の患者だけでなく、一般に健康といわれる方々の健康関連QOLを測定することも可能である。そこで我々は、医療機関を受診するほどの病気ではないが、健康ともいえない「未病」の状態を SF-36で評価するシステムを構築し、未病の段階で QOL を向上させるための健康づくりを支援するための研究を進めているところである。 |
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| 日本未病システム学会では、未病を「西洋医学的未病」と「東洋医学的未病」に分けて定義している。西洋医学的未病とは、自覚症状はないが検査で異常が見られるものであり、境界域高血圧、高脂血症、境界域糖尿病、肥満、高尿酸血症、動脈硬化、骨粗鬆症、無症候性脳梗塞などが含まれる。それに対して東洋医学的未病とは、自覚症状はあるが検査では明確にできない状態である。多種多彩な症状を自覚しており、そのために心身の健康度が全般的に悪化し、QOL も低下していることが多い。しかし、検査をしても異常がない、病気ではないという理由で、その対策はほとんど手付かずの状態にある。 |
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| 心身一如の全体観やバランスを重視した東洋医学の考え方は、未病者を対象にした健康づくりにおいても十分に役立つものである。今後とも、未病者の QOL を向上させるための研究を推進することに尽力していきたいと筆者は考えている。 |
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