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| 1. 漢方とEBM |
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この両者は相容れないものだという誤解がある。漢方が医学である以上、「根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)」と矛盾する訳がない。伝統医学研究で有名な津谷喜一郎教授(東大・薬学)は「漢方で言う『親試実験』の概念は EBM の考えに近い」と言っておられる。日本の漢方は「論より証拠」の医学だからである。
筆者もこの考えより、EBM の立場から皮膚疾患に繁用される漢方薬をエビデンスのレベルの観点から評価して来た。 |
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| 2. 治療のエビデンスとは? |
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| EBM ではある薬剤に関して実施された「適正な臨床試験結果」によりエビデンスの質のレベル分類を行い、患者への推奨度を決定する。エビデンスのレベルは5段階で評価される。 |
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レベル1:ランダム化比較試験(RCT)
レベル2:非 RCT の臨床試験(良質な前後比較試験を含む)
レベル3:後ろ向きの症例対照研究や質のやや劣る前後比較試験
レベル4:症例報告や症例集積研究
レベル5:基礎研究データや専門家の意見 |
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| 3. 皮膚疾患での漢方薬のエビデンス |
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| 帝國漢方製薬より製造販売されているエキス製剤を中心に略述する。 |
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1)
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補中益気湯:アトピー性皮膚炎(AD)の再燃抑制、ステロイド減量に有用であることが、最近、九大皮膚科・古江教授を中心とする多施設共同二重盲検RCTで示された(レベル1)。 |
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2) |
小柴胡湯:AD の自他覚症状改善とステロイド減量効果が、RCT 1件(残念ながらデータ解析に一部問題あり)と前後比較試験2件で示されている(レベル2-3)。 |
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3) |
柴胡清肝湯:AD の他覚所見と痒みへの有効性が前後比較試験3件で示された(レベル3)。 |
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4) |
十味敗毒湯:AD および湿疹・皮膚炎群の痒みに対し、抗ヒスタミン薬のフマル酸クレマスチンと同等かそれを上回る効果があることが1件の前後比較試験で示されている(レベル3)。 |
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5) |
黄連解毒湯:実証の老人性皮膚掻痒症への有効性が1件の前後比較試験で示されている(レベル3)。
また、黄連解毒湯と十味敗毒湯併用のざ瘡への有効性が、1件の大規模非 RCT で示された(レベル2)。 |
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6) |
温清飲と桂枝茯苓丸料の併用:乾癬の皮疹軽減と再燃抑制効果が1件の前後比較試験で示されている(レベル3)。 |
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7) |
荊芥連翹湯:ざ瘡への有効性に関し、本剤とテトラサイクリン(TC)系抗生剤とで有意差なしという大規模な非RCTがある(レベル2)。本剤とTC系抗生剤併用はさらに有効であった。 |
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8) |
柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯:これらには神経症、抑うつ状態への有効性を示す複数の前後比較試験がある(レベル3)。円形脱毛症など、心身相関が考慮されるにもかかわらず、抗不安薬などの新薬を嫌がる患者には有効であろう。 |
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| 4. 結び |
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| EBM ではエビデンス以外に、医師の技能、患者の価値観・好み、保健資源という要素が考慮される。漢方は患者の支持を得ている。我々はエビデンスの深化と技能の向上を目指すべきと考える。 |
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| <文献> |
| 1) |
幸野 健ほか:漢方医に必要なEBMのエッセンスとキーワード. 漢方研究 6:222-6, 2003 |
| 2) |
津谷喜一郎,幸野 健:(対談)EBMと漢方. WE 5:3-8, 2003 |
| 3) |
幸野 健:エビデンスに基づく漢方エキス剤療法, 皮膚科診療のコツと落とし穴(4)治療(西岡 清編), 中山書店、2006, p88-91 |
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