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睡眠障害とサフラン
    横浜相原病院 横浜朱雀漢方医学センター/城所 絢耶

ストレス社会、高齢化社会の進行に伴い、専門医以外でも心療内科領域の診療を余儀なくされる機会が多くなっています。一般内科外来では、約半数は心療内科領域の疾患が関連していると言われています。特に睡眠障害は発生頻度の高い症状で、高齢者の30%は睡眠障害を自覚しています。しかし、わが国では睡眠薬に対して「一度飲むとやめられない」とか、「ぼけてしまう」という誤った認識から拒否感が強く、入眠前にアルコール摂取する事例が多いようです。アルコールは睡眠の質を低下させ、さらには耐性が出現することから、逆に重度の不眠に進行する症例が多く認められます。また、高齢者では転倒や活動性の低下が危惧されることから、睡眠薬の中でも特に長時間作用型睡眠薬の使用を躊躇する場合が少なくありません。
このように、様々な問題により睡眠薬が使用しにくい場合にサフランが著効する場合もあります。サフランは駆瘀血作用、鎮静作用があり以前から家庭薬として使用されていましたが、近年では精神科領域で入眠作用が報告され睡眠薬の減量、中止が可能となる症例も報告されています。
○サフランについて
サフランはあやめ科の多年草で、その柱頭及び花柱上部を乾燥させたものです。薬理作用としては、in vitroでは血小板凝集抑制・抗凝固・線溶促進作用、in vivoでは家兎の血管拡張作用、特に胸部大動脈や冠動脈の拡張作用が認められています。このことから出血傾向のある症例や妊婦への投与は注意が必要です。その他、中枢神経系への作用としてマウスでエタノールによって障害を受けた学習と記憶過程を改善することが推測されています。
次に、サフランの効果が認められた症例を少し紹介してみたいと思います。
症例1は64歳女性です。25年前からの睡眠障害を治して欲しいとやってきました。他院でエチゾラム・アルプラゾラム・ニトラゼパム処方されてずっと飲んでいるが良くならず、さらには不安感も出現して通院もできなくなったというのです。診察すると舌は紫色で舌下静脈は明らかに怒張していて、お腹は力がなくふにゃふにゃです。駆瘀血と補腎を目標に加味逍遥散・牛車腎気丸処方すると、しばらくして症状は楽になったと言うのですがすっきりしません。入眠作用を期待してサフランを追加してみると2週間後には不眠が改善し睡眠薬は必要なく加味逍遥散とサフランを継続しています。
症例2は58歳女性で不眠と頭重感、のぼせがあると受診されました。マレイン酸フルボキサミンを内服していましたが全身が締め付けられる感じがして自己中断してしまいました。診察すると舌は紫色で舌下静脈は明らかに怒張しています。加味逍遥散、酒石酸ゾルピデムを投与すると頭重感、のぼせはよくなりましたが不眠は変化がありません。サフランを追加すると1カ月後には症状は改善し酒石酸ゾルピデムを中止しました。
症例3は66歳女性が数年前からの入眠障害を訴えて受診しました。レボメプロマジン、フルニトラゼパム、ニトラゼパムを内服していたようですが良くならず、漢方治療を希望して来院しました。舌下静脈は怒張して腹直筋の緊張も見られたので抑肝散を出してみました。不眠は軽快したようですがすっきりしなかったのでサフランを追加しました。一ヵ月後には入眠障害は改善しましたが中途覚醒が見られたのでサフランを倍量にしたら中途覚醒も改善しました。
これらの症例では瘀血所見が著明に見られたので更年期障害がきっかけとなり症状が遷延したものと考えられます。明らかな瘀血所見が改善したのちもサフランを継続することで現在は睡眠薬の投与なしに睡眠障害が改善されています。今回の症例には含ませていませんが、統合失調症の症例でもサフランを 1~2g/day投与することで睡眠薬の減量を期待できる症例が多数報告されています。高齢者や睡眠薬の無効例ではサフランを試してみる価値があると思います。
城所 絢耶  
2001年 金沢医科大学 医学部医学科卒業
2001年5月   京都大学医学部附属病院 研修医
2003年3月   京都民医連中央病院 内科研修
2005年3月   社会福祉法人 日本医療伝道会 衣笠病院 内科・東洋医学科
2007年11月   横浜相原病院 心療内科
2005年4月   横浜朱雀漢方医学センター 兼務
日本医師会認定産業医
所属学会
日本内科学会
日本東洋医学会
和漢医薬学会
日本緩和医療学会
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