美肌の漢方を考える
    医療法人LEADING GIRLS 女性医療クリニック・LUNA理事長/関口 由紀

(はじめに)
生活の質の向上に熱心な団塊の世代の高齢化がはじまり、アンチエイジング(老化予防)医療が盛んになってきている。精神にも、肉体にもアンチエイジング(老化予防)は必要であるが、女性にとって、もっとも必要なアンチエイジング(老化予防)はなんと言っても美肌である。美肌は、体が健康な証拠であるし、美肌であれば、こころも晴れやかになれる。美肌のためのノウハウは、数限りなくあるわけだが、今回は、美肌の漢方を考えてみたい。
(美肌でないとは)
しみ、しわ・たるみ、くすみ、吹き出物、にきびが、代表的な皮膚トラブルである。これらが存在すると美肌ではないということになろう。このうちにきびは、若年者に起こる場合が多いので、今回は、中高年を悩ませるしみ、しわ・たるみ、くすみ、吹き出物の5トラブルをひとつずつ考察していきたい。
(しみ)
しみは、顔面に起こる色素沈着である。しみは、お血(血の滞りのことで、性ホルモンのアンバランスや、微小循環不全によっておこる)の、特徴的な兆候である。お血の漢方薬は、日本では特に珍重される傾向にあり、広く市販されている。代表的な処方で、健康保険で“しみ”にも処方できる方剤が、桂枝茯苓丸加薏苡仁である。駆お血作用の強い桂枝茯苓丸に、消炎作用のある薏苡仁が配合されている。ビタミンCや、トラネキサム酸と併用するとさらにパワーアップが可能である。これ以外にも四物湯の成分のはっている漢方薬は、すべてしみに効果があると考えられ、冷えのぼせが合併する時は温清飲、全身倦怠感がある時は十全大補湯、むくみがある時は、猪苓湯合四物湯などがおすすめである。
(しわ・たるみ)
閉経前の場合、女性ホルモンのアップダウンで、肌の調子も変わる。月経前に、夜に少量のアルコールを摂取しただけなのに、朝、顔がいつもの倍くらいにむくんでしまった経験のある女性は多いであろう。この朝の浮腫みは、夕方に向かってすこしずつ軽快するが、一晩寝るとまた出現する。この朝、表皮がむくみで突っ張り、夕方にかけて突っ張りがとれるという現象が繰り返されると、20歳台は皮膚の再生力が高いので、しわにならないが、年齢を経るごとに小じわ出現の原因となる。よって顔が浮腫まないように生活することが、しわ対策の要となる。夜9時以降の飲酒・飲食は控え、早寝早起きの習慣をつけるのが、もっとも効果的である。しかし規則正しい生活ができないのが人間の性である。そこでむくみをとる漢方治療を考えてみたい。まずだれでもできる即効的な使い方として、ついつい過度に飲酒してしまった夜は、就寝前に五苓散を一方飲んで寝る習慣をつけるという方法がある。これだけで翌日のひどい顔のむくみの予防になる。漢方を継続的に飲めない人にお勧めの治療である。じっくりと浮腫みの治療をしたい人のうち、むくみとともに月経痛や、冷えが合併するようなら当帰芍薬散などをしばらく飲んでみるのもよいだろう。むくみに加えてストレスですぐ胃の調子が悪くなるならば胃苓湯などがおすすめである。さて閉経を過ぎていよいよ熟年期に入ると、老化との本格的な戦いが始まる。小じわはしわになり、さらにたるみへと進行する。その際の強力な味方が、補腎剤という、腎気(先天的な生命エネルギー)を補充する漢方薬である。ひえの程度により、六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸などを使い分ける。これらの薬も、むくみを予防する。
(くすみ)
くすみとは、皮膚に透明感やつやがなく全体的に黒っぽくなっている状態である。血行不良や、新陳代謝の低下が原因とされている。この兆候を漢方的に解析すると気虚ということになる。元気がないのである。全身倦怠感や、眠気などがある場合は、補中益気湯、胃の調子も悪い場合は、六君子湯、ひえを感じる場合は、人参湯などがおすすめである。
(吹き出物)
にきび年齢を過ぎた大人の口元にポッツと1つ小さな赤い吹き出物。人はそんなに気にしないだろうとは思うけど、自分としてはとても気になる。そんな経験は誰にでもあるだろう。そういう時は、胃もたれや、口内炎がなかなか直らなかったりするものである。こういう時は、半夏潟心湯や、黄連湯などで消化器の熱をとると、不思議と顔の吹き出物もよくなっていくものである。
(おわりに)
美肌は、健康のバロメータである。女性たるもの、いくつになっても美肌と言われたいものである。
関口 由紀 (せきぐち・ゆき)
1989年 山形大学医学部医学科卒業
1991年~2001年   横浜市立大学医学泌尿器科入局、
関連病院で一般泌尿器科の研鑽を積む。
1998年~2000年   東京大学医学部生体防御機能学講座において丁宗鉄先生に師事し、
東洋医学の研修を行う。
2001年~現在まで   湘南鎌倉総合病院産婦人科婦人泌尿器センター女性泌尿器外来担当
2004年~現在まで   横浜市立大学医学部附属病院泌尿器科女性泌尿器外来担当
2005年~2008年   横浜元町女性医療クリニック・LUNA院長
2007年   横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学終了
2008年~   女性医療クリニックLUNA・ANNEX開設、
医療法人LEADING GIRLS理事長として活躍中
横浜市立大学客員准教授、日本泌尿器科学会専門医・指導医、
日本東洋医学会専門医・指導医、医学博士
著書
スキルアップのための漢方相談ガイド(泌尿器・腎)南山堂 2004年
尿のトラブルがまんしていませんか? 講談社2005年
インテグラル理論で考える女性の骨盤底失禁 シュプリンガージャパン2006年
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