漢方の未来
    若林医院/若林 研司

先ごろの所謂「仕分け事業」のなかで漢方薬エキス剤が保険適応から外されるかもしれないという話が出た。この事は今までも何回も俎上に乗ってきたことで、その度に事なきを得てきたが、今回は、政権交代後の「目玉商品」である「仕分け事業」ということで信憑性はかなり高いと考えられた。そのため日本東洋医学会を中心として、危機感をもって反対の署名運動等の行動を起こし阻止に乗り出した。蓋をあければご存知のように今までと変わらず保険適応は継続され一応一件落着となったわけである。
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このように度々漢方エキス剤が保険適応から削除されるという話になる背景には、「果たして漢方薬は治療効果があるのか、はっきりしたエビデンスがないのではないか」という考え方が根強く在るように思われる。確かに一理ある。西洋薬は幾多の実験室に於ける試行錯誤の研究を積み更に治験を重ね十分効果がありかつ副作用が少ないという結果即ち、「エビデンス」の基、認可される。しかもいったん認可されたからといってその後の効果判定、副作用の出現状態によっては認可が取り消される可能性も持っている。
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一方漢方薬はそのような検証はなく、漢方四千年の歴史とかいうよく訳のわからない単なる経験によってのみ使用されている。この様な両者を同等として判断するのはおかしいのではないか。尤もな理屈である。この様な状況を受けて東洋医学会においても「東洋医学のエビデンスベイスドメディスン(EBM)」を検証し漢方薬を西洋薬と同じ土俵に乗せるべく努力をしている。がこの様な方法をとり漢方エキス剤を保険適応から削除されないようにするということは、本当に漢方の真髄に沿っていることなのだろうか?
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そもそも、漢方薬、西洋薬の土台に有る東洋医学と西洋医学の思想は全く異なるものである。その相異を詳細に書き連ねればそれだけで一冊の本が出来上がってしまうほどである。しいて一点あげるとすれば東洋医学は巨視的観点から物事を捉えることに対して、西洋医学は分析的に物事を観察するといったらよいであろうか。そのような異なる土台より発生した漢方薬、と西洋薬を同じ土俵に上げるならまだしも、西洋医学的判断で判定することにどれだけの意味が見出せるのであろうか。
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私は「確かに一理ある」「尤もな理屈である」と記述したがこれらはすべて西洋医学的判断に立脚したらという大前提があるのだ。そして、この大前提は実はそれほど意味のある前提ではないのであることは、前述した如くである。我々は日本語で書かれた文章の優劣を英語的に評価することはなく、あくまでも日本語としてその価値を判断するのではないだろうか。このことに異論を挟む方は少なかろう。しかし、現に今漢方薬の検証に関して行なわれていることは、まさに日本語で書かれた文章の優劣を英語的に評価することを良しとする風潮なのである。現代医学の中で漢方薬を認知させるための苦肉の策という点は否めないとしても、本当にこの様な方法で漢方薬の未来はあるのかと考えさせられる昨今である。
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若林 研司  
1982年3月 東京慈恵会医科大学卒業
1982年4月   東京慈恵会医科大学心臓外科学教室 入局
1992年4月   東京慈恵会医科大学心臓外科学教室 退局
若林医院 入職
資格
スペース 医学博士 取得(1987年)
日本東洋医学会 専門医
日本胸部外科学会 認定医

三鷹医師会 副会長
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