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女性には腎がない??
    福岡大学病院東洋医学診療部客員教授/宮本 康嗣

女性には腎があるか、という問いをすれば、何を馬鹿な質問を!! とお叱りを受けそうですが、しかし、八味地黄丸や牛車腎気丸、六味丸などは『男性の薬』と考えているドクターがかなりの数になる、という事実はあります。これは裏を返せば『女性には腎がない』という奇妙な考えに通じることになるのですが、実際、筆者が十数年前に山口大学へ赴任後、大学病院での漢方専門外来を新たに開始し始めた頃、院内の漢方薬使用状況を調査した際、漢方外来以外で補腎剤が使用された例は圧倒的に男性が多く、一方で当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など、大まかな分類での駆瘀血剤は他科では男性にはほとんど使われていなかった、という事実がありました。つまり多くのドクターは、補腎剤は男性用、駆瘀血剤は女性用、という使い分けをしていたのです。
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腎の概念は幅広いものであり、先天の気の蓄え場所としての腎は、老化にとって重要な臓器であるだけでなく、女性では子宮や卵巣などの生殖器系機能まで含むため、生理に伴う身体の変調にも腎は最優先で考慮すべき臓器なのです。
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ここで症例を・・・
(1)54才女性、主訴は不眠。白苔を伴う腫大舌、尺脈弱、臍下不仁顕著などから牛車腎気丸を選択、服薬1週間で5~6時間ぐっすり眠れるようになり嬉しい。他の訴えとして肩こり、頭痛、冷えなどもあったがこれらも改善、後に加味逍遥散を併用し、身体が温まり冬場は暖房費が少なくなった、と喜ばれる。
(2)35才女性、主訴は不妊、冷えは強くむくみやすい。やや腫大舌、尺脈弱、臍下不仁顕著などから、まず牛車腎気丸にて治療を開始、14週後には冷えやむくみは明らかな改善を認め、臍下不仁もなしと判定できるまでに改善あり。この時、舌はやや暗、当帰芍薬散を併用し28週後には妊娠にこぎつけ、以後は当帰芍薬散のみで無事出産に至った。
(3)31才女性、主訴は頭痛、手足の火照り、生理痛。腫大歯痕舌、臍下不仁顕著などから八味地黄丸にて治療を開始。3週間で頭痛と火照りは改善、5週目には生理痛のひどいのも改善。
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このように私の外来では、女性に対し最初から補腎剤を使う例が多いのですが、不眠に対して補腎剤を使うことは一般的には稀であるにもかかわらず、脈診や腹診による証に従えば確かに効果も得られるのです。1例目では冷えの改善が不眠にも効果があった例ですが、冬の暖房費はかかって当たり前、と思っていたのが実はそうではなく、その人にとっては当たり前だった冷え性が単にひどかった、ということなのです。
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不妊の原因も冷えであることが多く、まず冷えを改善すれば妊娠しやすくなり妊娠に至った、というのが2例目でしょう。
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頭痛、手の火照り、生理痛のキーワードならば加味逍遥散も考えられますが、足の火照りは腎虚の一症状でもあり、臍下不仁顕著という所見からは3例目も補腎剤を選択せざるを得ず、結果、効果が認められたというわけです。
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補腎剤単独でも生理痛に効果が認められる例は少なくありませんが、駆瘀血剤のいずれかを併用することによって効果はさらに高まり、それでも効果が薄い場合には、生理の5日前から芍薬甘草湯を併用する、この3処方併用は生理痛に対する最強のトリオ、と私は思っています。
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女性には腎がない、どころか男性と同じように、いや、男性以上に腎は女性にとって重要であり、補腎剤は女性にこそ多用すべきである、というのが最近の私の持論です。
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宮本 康嗣  
昭和45年3月 九州大学・理学部・化学科卒業(卒業後2年間研究生として残る)
昭和47年4月〜   ㈱津村順天堂(現ツムラ)・津村研究所研究員
昭和51年5月   在職中漢方に目覚め、漢方医を志して、同上・退職
昭和58年3月   福岡大学・医学部卒業
昭和58年6月   医師免許取得、福岡大学病院第一内科研修医
昭和60年4月   福岡大学医学部 薬理学教室助手
平成1年7月より
平成3年6月まで
  福米国コロンビア大学セント・ルークス/ルーズベルト病院 リウマチ学研究室 研究員(エイズと漢方に関する臨床免疫学的研究に従事)
平成1年11月   福岡大学より医学博士号授与
平成3年7月   福岡大学医学部薬理学教室助手
平成5年4月   福岡大学病院第一内科兼務(助手)
東洋医学外来(現・東洋医学診療部)担当
(平成9年8月からは非常勤にて平成23年現在に至る)
平成9年7月   福岡大学・退職
平成9年8月   山口大学医学部生体防御機能学講座・助教授
山口大学医学部附属病院では漢方外来を担当
平成12年8月   同生体防御機能学講座(平成15年より漢方医学講座と改名)・教授(医学部での教育と研究、大学病院での漢方診療に携わる)
漢方診療において重要な腹診の科学化のため、デジタル漢方腹診計を5年がかりで開発、完成させ、臨床応用中
平成18年7月   山口大学・漢方医学講座を3期9年任期満了に伴い退職
平成23年現在   福岡大学病院・東洋医学診療部・客員教授
福岡県・誠愛リハビリテーション病院・漢方外来
熊本県・益城病院・漢方専門外来
山口県・尾中病院・漢方外来 を兼任
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